合理化

1. 工程の必須機能明確化


2. 現状調査


3. 技術調査


4. 対策実施


合理化の目標としては、品質を満足しながらコストダウンや製造時間短縮をすることが一般的です。
大きな合理化効果を得るためには、その製品機能と製造工程との関係や、工程のメカニズムを理解しなくてはならず、ハードルの高いものになります。 以下当社の手順を記述してみます。


1. 工程の必須機能明確化


各工程の作りこんでいる必須機能が何なのかを明確にする必要があります。
製品の必須機能は普通明確です。出荷検査項目にも記述されております。
しかし製造工程になるとそれぞれ何をどこまで満足すればよいかが不明瞭なことが多いのです。

[例1]

スパッタ工程表には、成膜条件や膜厚(成膜時間)は規定されていますが、エッチングマスクとして使用される膜であれば、必要なのは膜厚ではなく、エッチング液のバリア性です。すなわち、緻密であり、ごみ等によるピンホールの少ない膜であれば膜厚は薄くてよく合理化できます。

[例2]

A(粗研磨)→B(中間研磨)→C(仕上げ研磨)→D(エッチング)の工程の場合、研磨で板厚調整、平坦化し最後にエッチングで歪取りしているので、必要なのはこの4工程なのでなく、厚みのそろった歪のない平坦面になります。厚み精度や面粗さ、応力など許容値を明確にします。
明確でない場合はあえて面粗さや応力を増やした製品を作ってみてどこが許容値か判断していきます。
高価なB、C研磨をしなくてもエッチングで達成できれば大きな合理化になります。
またはB、C研磨の無駄を排除し効率化することで、砥粒量と生産時間を減らし合理化できます。


2. 現状調査


必須機能がわかれば、それに対し現状がどうなっているかを確認します。

[例1]

膜をXRDやナノインデンターなどで分析し、現状膜が緻密なのか確認することが必要でしょう。
ピンホール部をSEM等で分析し、どのような異物起因か痕跡を探します。

[例2]

それぞれの工程の板厚、粗さや歪を分析します。どの工程が必須なのか、わかってきます。
最終エッチングの除去厚みと粗さの関係などその工程条件の必然性なども確認します。
また、なぜ研磨B、Cが高価なのか、よく調べます。
砥粒が研磨せずに流れてしまっているのか、凝集して研磨面に入らないのか、摩耗や劣化が大きいのかによって対応は異なります。


3. 技術調査


必要機能と現状とのギャップが明確になったところで、その対応策の検討です。

[例1]

どうしたら膜質を緻密にできるか調べます。ガス圧を下げたり、成膜でのバイアス印加、不純物を添加するなどいろいろあると思います。
ごみによるピンホールであれば、チャンバーの壁面を荒して膜脱落しずらくする、浮遊するごみを例えば静電トラップする、成膜冶具を傾けてごみの付着を防止するなど、あります。
他の工程への影響を考慮しながら選んでいきます。

[例2]

後工程(最終エッチング)からどこまでできるか検討します。例えばエッチング量が多くても平坦にできるエッチング液の組成などを調べます。
その改善幅が大きいほど前工程は省略できます。
砥粒については、
・流れているのであれば、食いつきのよい定盤面にする、排出する砥粒を再度研磨面に運ぶ循環方法などを調べる
・凝集しているのであれば液のpH等を調整し防止する方法を調べる
・砥粒の摩耗が大きいのであれば、化学的に研磨をアシストする等、調べる


4. 対策実施


選んだ対策を実施、効果を確認します。
良くない結果であれば、見落としていたことがあるということなので、それを同じように調査して対策すればよいのです。