洗浄

1. 汚染物と基材を正しく捉える


2. 洗浄のメカニズムを検討する(湿式、乾式、乾式+湿式)


3. 洗浄の安定性を確保する方策を検討する


4. 洗浄品質評価方法


5. 装置仕様


6. 必要純水量、排水&廃液&廃棄物処理


7. コスト検討

1.汚染物と基材を正しく捉える

  1. 基材はわかっているつもりでなかなか難しいところがあります。例えばSiや炭素鋼の場合は酸化してSiO2やFe2O3になっていることがあります。それらの違いで洗浄方法は異なります。
  2. 汚染物は使用している間接材料(研磨剤や加工油など)だけでなく、加工された場合は基材自体も汚染物となります。エッチングされた場合は反応生成物も汚染となります。

2.洗浄のメカニズムを検討する(湿式、乾式、乾式+湿式)

物理化学的除去

A. 粒子除去

粒子を除去するということは基材表面に接合している粒子を「離脱させる」ことが必要です。
そのためには…

  • 基材と粒子の間に洗浄液が入り込む
  • 脱離によって増加する界面エネルギー以上のエネルギーを与える(温度、US、こすり等)
  • もしくは基材、粒子をエッチングし脱離させる
  • 離脱した粒子の再付着を防止する(ζ電位制御、流れ、排出等)

B. 有機除去

有機汚染は基材との接触部が広く汚染自体を溶解、分解させることで除去できることが多いです。

溶解させる
 似た性質の溶媒で溶解させる(水、有機溶剤等)
 分散、乳化、可溶化させる(界面活性剤、アルカリ等)

分解する
 分子の結合力以上のエネルギーを与える(UV等)
 酸化し分子結合を切る(O3、H2SO4、H2O2等)
 ケン化(アルカリ等)

C. 金属除去

金属汚染は基材表面や内部に侵入し半導体等の特性や信頼性に影響するします。

  • イオン化させて除去する
  • 基材ごとエッチング除去する

機械的補助

A. 超音波(US) &メガソニック( MS)

溶媒に振動を与え汚れの脱離、分散を補助する。以下は注意を要します。

  • 除去したい粒子の大きさにより周波数は変わる
  • 超音波には定在波が生じるので、均一に洗浄するには基材を揺動させ、エネルギーを無駄にしないためには液深さを調整する必要がある
  • 被洗浄物が薄く面積のある場合などは超音波で共振し洗浄ムラがでることがある。その場合は超音波の周波数を複数化し対応する
  • 水を脱気することで超音波のキャビテーションが強くなり洗浄効果が上がるが、製品に傷がつくこともある
  • キャビテーションにょる洗浄効果を大きくする温度を検討する。水と溶剤とでは異なる
  • 洗浄冶具によって超音波が妨害されたり減衰したりする(特に網かご)
  • 槽内に速い流れがあると超音波は乱される

B. 槽内やチャンバー内の流れ

基本は、PIV,PTVやシミュレーションを用いて排出効率の良い槽の設計をします
完成したものは以下で効果を確認します。

  • 溶媒と密度の同じ親水粒子(目視できる大きさ)を槽内に入れ流れを観察する
  • 槽を腐食、汚染しにくい溶質(食塩など)を入れオーバーフローなど排出させながら槽内導電率の変化で排出効率をみる

乾燥

以下のような方式が一般的です。ただし洗浄がうまくできても最後の乾燥で失敗するとシミになります。
最も多いのが乾燥冶具との界面に最後の液滴が残りウォーターマークになるものです。冶具の接触部を基材より親水にするなど改善できることはあります。


A. 溶剤置換


溶剤置換
IPAベーパー乾燥などでは被洗浄物の熱容量を計算し、処理時間内に十分な温度に上昇するか判断すること。温度上昇しなければ乾燥できない。
ブロー、振り切り
飛び散りなどを注視して設計すること。
減圧
穴がある製品の乾燥などは効果ある。貼りついたチップなどの間は乾燥できない。

3.洗浄の安定性を確保する方策を検討する

  1. 洗浄液&槽の汚れと排出性、クリーニング方法
  2. 洗浄液の劣化と対策
  3. チャンバー内の反応生成物堆積とクリーニング方法

4.洗浄品質評価方法


簡易評価方式

工場で簡易的にするのであれば下記があります

  • 集光ランプで表面を観察し粒子や異物などが残存していないか確認する
  • 純水スチームをかけたり、純水中に浸漬したりし、基板が本来あるべき状態か(撥水か親水か)、ムラがないか確認する
  • 小麦粉などを振りかけ付着しやすいところがないか確認する
  • ブラックライトで有機物が残っていないか確認する

高度評価方式

  • レーザーなどを照射し散乱から汚染粒子径や数を計測する(半導体ではインラインでも使われています)
  • 被洗浄物を溶媒に浸漬し付着有機物を溶解させ、溶媒をガスクロなどで分析する
  • 表面をESCAやFTIRなどで分析し状態を解析する

5.装置仕様

各槽の洗浄時間を決めます。上記の洗浄時間、純水リンス排出時間により決まりますが、槽数を多くすることで槽あたりの時間を短くできます。
液漏れや発火、酸欠などの安全センサーを設けます
自動洗浄装置の場合、洗浄品が洗浄後に放置されても汚染しないように出口にヘパフィルターを付けます

6.必要純水量、排水&廃液&廃棄物処理

槽内の汚染排出効率からリンスに必要な純水量を求めます。
最後の方のリンス槽の排水は汚染も少ないのでリサイクルすることができ、コストダウンになります。

7.コスト検討

装置償却、洗浄液+廃液、純水+排水、電力、圧空、作業者の人工などでコストを計算します。