洗浄

1. 現場調査


2. 分析解析


3. 対策検討


1. 現場調査


発生状況、経緯


不良率推移の特徴を見出します(5M変動考慮)
洗浄不良が発生した際にすぐ分析をする方が多いのではないでしょうか。しかしどんな不良(メカニズム)なのかによって分析方法は変わります。
また分析ではいろいろに解釈できる結果が出ますので、いきなり分析してもよくわからないことが多いのです。
まず現象を正しく把握し、それに合うメカニズムを想定することから始めます。例えば下記のような不良率推移の着目例をみてください。それからなにか思い当たることが出てきませんか。


(例)発生する製品機種や時期、曜日、時間(シフト)
  発生してからの発生率増減→ 図1
  工程管理dataや他の品質、不良data
  (不良との連動ないか)
  洗浄液交換や装置メンテナンス時期
  設備メンテナンス時期(純水など)


図1

【図1】


装置、作業


装置や作業に特徴を見出します
洗浄不良推移に目立った特徴がない場合、以下はいかがでしょうか。これらは基本ですが、なにか不具合がないでしょうか。
(例)装置状況(錆や劣化、汚染、反応生成物、変色、水の泡立ちや異物)
  装置動き、作業者の動作(習熟)
  槽超音波が被洗浄物に効率よく印加されているか冶具形状や網のメッシュ等


環境


工程設置環境の特徴を見出します
クリーンルームは温湿度管理ができていると信じられていますが、外気導入されていますので天気によって変わることがあります。不良と天気との相関はありませんか。
(例)クリーン度、温湿度


不良確認


不良の顔の特徴を見出します
不良の顔には特徴が出やすいです。しかし全部に出るとは限らず、数個見て「こうだ」とか「わからない」としてはいけません。なるべく多くの時期や製品で不良を観察してその特徴の痕跡を探し、メカニズムを想定してみてください。
以下のような観点をまとめてみましょう。洗浄品質は良いのに後工程で不良が出る場合は、見えない洗浄不良である場合があります。下記のような簡易的な可視化手段も検討ください。

(例)発生する不良の形状、位置(分布)、大きさ、色、それらの推移→ 図2
(例)不良が後工程で発生し洗浄後には不良が見えない場合の対応
  スチームやパウダー、ブラックライト等で可視化する


図2

【図2】


2. 分析解析


分析


汚染物質が何かを確認します
現場調査で不良のメカニズムを想定しましたら、それを検証するステージです。
下記を参考に分析してみてください。分析結果が合わなかったら想定メカニズムが間違っていますので、現場の調査に戻ります。
分析結果から新たなメカニズムを考えられるようになります。
(例)汚染位置がわかる場合の分析
  微細形状、大きさ(顕微鏡、SEM等)、成分(EDX、FTIR、XRD等)
(例)不良が後工程で発生し洗浄後には不良が見えない場合の分析
  純水や純溶媒に浸漬し汚れを抽出
  →フィルタリングや清浄基板上で乾燥させ微細形状(顕微鏡、SEM等)、成分(EDX、FTIR、XRD等)
  →pHや液中パーティクルカウンタ、LC、GC等で分析

工程で使用している部材を確認し、必要に応じ分析します
汚染物質が加工刃や冶具成分であることもあります。また洗浄液の劣化が進んでいることもあります。想定メカニズムに沿って確認しましょう。
(例)バイトや加工油、研磨剤等の加工部材、槽や冶具、チャンバー部材、洗浄液内容物、純水(水)
  MSDSやミルシート等の情報、上記分析方法によって確認
(例)洗浄液劣化度
  pH、アルカリ度、粘度、比重、屈折率、透過率、液中粒子数、等

洗浄装置の調査をします
超音波洗浄ではノイズが大きいので洗えていると思われがちです。極端な例ですが、超音波振動子が槽底から剥がれていたということもあります。実際に確認しましょう。
(例)機械力
  超音波音圧測定器等を用い槽超音波の強度劣化、分布異常等がないか確認→ 図3
  清浄な透明ビニールに包んだアルミフォイルや手を超音波槽にいれると概ねわかります。
(例)汚れの排出性
  通常洗浄槽ではフィルタリングやオーバーフローで汚れが排出されます。
  しかし槽内の流れが良くない場合、いつまでも残留していることがありますので確認が必要です。
  PIV等を用い槽内の流れ、排出性を調査→ 図4

必要に応じ環境分析をします
洗浄後に汚染している可能性がある場合は下記が必要です。
(例)清浄基板を工程近傍に放置し堆積する塵やガスなどの付着物を分析する


【図3】 槽内の超音波解析例

【図3】 槽内の超音波解析例


【図4】槽内の流れ 汚染排出解析例

【図4】


解析


現場調査結果と分析結果を総合的に整理し、不良の発生メカニズムを見出します
(例)粒子汚染の場合、汚染/基材のζ電位や表面エネルギー等を測定し現状調査結果と合致するか確認をする→ 図5
  有機汚染の場合、溶解が可能な洗浄液なのか、ハンセン溶解パラメータ等を調べ現状調査結果と合致するか確認をする
  金属汚染の場合、イオン化が可能な洗浄液なのか、プールべ図等を調べ現状調査結果と合致するか確認をする→ 図6


【図5】

【図5】


【図6】

【図6】


3. 対策検討


見出した不良発生メカニズムから効率的な対応策を検討します
(例)粒子汚染/基材のζ電位や表面エネルギー等を測定し汚染を除去しやすい洗浄液を選択する、もしくは調合する
(例)汚染金属のプールべ図より洗浄液を選択または調合する