洗浄

本ページでは、 当社がこれまで湿式洗浄を中心に 多数の技術相談・課題解決に携わってきた経験をもとに、 現場で特に質問の多い内容を Q&A 形式で整理しました。

掲載している質問は、 以下の3分野に分類しています。

•    洗浄の基礎に関するQ&A(14件)
 洗浄の考え方、 除去メカニズム、 洗浄工程組み立ての捉え方など
•    洗浄液に関するQ&A(18件)
 洗浄液選定、 コスト、 持続可能性に関する疑問
•    超音波洗浄に関するQ&A(13件)
 メカニズム、 粒子大きさと周波数選択、 使用時の注意点など

回答に関する追加のご質問や 他のご質問があれば 「お問い合わせ」からお尋ねください。

洗浄の基礎に関する Q&A

1.洗浄とは


2.汚れは何%除去すれば洗浄できたといえますか

 

3.洗浄後の製品表面はどうなっていますか


4.湿式洗浄のメカニズムを教えてください


5.汚れの分離にはどのような方法がありますか


6.濡れを評価する指標は何ですか


7.汚れを製品から剥離するエネルギーについて教えてください


8.洗浄で「落ちる/落ちない」は何で決まりますか


9.汚れの再付着防止をするにはどうすればよいですか


10.複数の汚れがある場合はどのように洗浄しますか


11.製品と強固に付着しており超音波で剥離できない汚れはどうすればよいですか


12.洗浄不良はなぜ起こるのですか。代表的な原因と分類は


13.突発的な洗浄不良と慢性的な洗浄不良の違いは何でしょうか


14.洗浄評価はどのように行うべきでしょうか

洗浄液に関する Q&A

1.洗浄液はどのように選定すべきか、考え方を教えてください


2.洗浄液の洗浄力は何によって決まりますか


3.粒子汚れを除去しやすい洗浄液はどのような液ですか


4.洗浄にはなぜアルカリ洗浄液が多いのですか

 

5.水系、準水系、非水系の洗浄液があるようですが、どのように分類されているのですか


6.汚れが、粒子、油、セラミック膜である場合、それぞれ何系の洗浄剤が適していますか


7.汚れを溶解して除去したい場合、どのように溶解する溶媒を見つければ良いですか


8.汚れを溶解して除去する場合、市販の非水系や準水系の洗浄液をどのように選択すればよいですか


9.アルカリ洗浄の品質を向上させたい場合、アルカリ濃度をUpさせればよいですか


10.ステンレス製品上のセラミック膜の剥離液について教えてください


11.油汚れを水系、もしくは準水系洗浄剤で洗浄したいのですが、どのような液になりますか


12.洗浄液の劣化はなぜ起こるのでしょうか


13.洗浄液の交換タイミングはどう判断すべきですか


14.リンス水を減らせる洗浄液について教えてください


15.持続可能な洗浄剤の考え方を教えてください


16.洗浄コストが高くなる主な原因とは何でしょうか


17.安価な洗浄液に変更したいのですが、注意点はなんでしょうか


18.洗浄液変更によるトラブル事例とその考え方を教えてください

超音波洗浄に関する Q&A

1.超音波の洗浄メカニズムについて教えてください


2.低周波(20-40kHz)、中/高周波(100kHz-MHz)の洗浄の特徴、注意点にはどのようなものがありますか

 

3.汚れ粒子の大きさと選択される超音波周波数の関係について教えてください


4.なぜ微細な粒子は洗浄しにくいのでしょうか


5.超音波洗浄で汚れが落ちない原因にはどのようなことが考えられますか


6.IPAの超音波洗浄力(キャビテーション力)は水と同じと考えてよいですか


7.超音波キャビテーション洗浄の適温はどれくらいでしょうか


8.超音波洗浄に適した溶存ガス濃度はどれくらいですか


9.超音波の強さはどのように評価しますか


10.超音波洗浄で汚れを除去できている場合、汚れの剥離エネルギー⊿Gより超音波の印加エネルギーが大きいと計算(確認)されているのですか


11.超音波洗浄の出力は高ければ良いのですか


12.超音波洗浄による部品ダメージの原因と対策は何ですか

洗浄基礎に関する Q&A

1.洗浄とは

製品の品質に影響するダメージを与えずに汚れを除去して要求品質を達成することです。 洗浄を強くすると製品ダメージも増えますので、そのバランスをとりながら品質を満足させます。 ダメージとは 洗浄液による腐食や、 超音波によるキズ、 後工程に影響する変質(面荒れ、表面酸化)などです。

2.汚れは何%除去すれば洗浄できたといえますか  

製品の要求品質を満足させるレベルであり、必要以上に除去する必要はありません。 過剰洗浄はコストに直結します。
工業洗浄は「汚れを完全に除去する」こと自体が目的ではなく、 製品機能・信頼性・後工程を成立させるために 必要十分な清浄度を確保することが目的です。 したがって洗浄設計では、「どこまで落とせばよいか」を先に定義し、そのための化学的・物理的手段を選択します。

3.洗浄後の製品表面はどうなっていますか 

洗浄後も汚れや洗浄液等がわずかに残存しています。 洗浄で表面が酸化したり表面荒れを生じている場合もあります。 要求品質を満足するレベルにそれらを制御する必要があります。 洗浄後は続いて環境汚染物質が吸着してくるので初期汚れとの区別が必要です。

4.湿式洗浄のメカニズムを教えてください

以下の5つの基本工程で構成されております。
①汚れと製品の濡れ ②汚れの分離 ③汚れの再付着防止 ④汚れの排出(リンス) ⑤製品の乾燥
洗浄歩留まりが悪い、 安定しない等の品質課題がある場合は このどれかに問題があります。

5.汚れの分離にはどのような方法がありますか

汚れの分離には「剥離」「溶解」「分解」があります。
① 剥離: 粒子をそのまま分離し洗浄液に分散する ②溶解: 汚れを分子レベルで洗浄液中に取り込ませる ③分解: 化学反応により汚れの構造を変え洗浄液に取り込ませる
ただし実プロセスではこれらを明確に分けて利用しているのではなく、分解→溶解→分離、 溶解→剥離→分離、など連続的に起こることも多く、どの機構が支配的かを見極めることが重要です。

6.濡れを評価する指標は何ですか

表面張力や表面自由エネルギーを使います。 表面張力の大きい製品や表面張力の小さい液は濡れやすくなります。 ただ文献等に記載されている表面張力の値は 清浄な表面での値なので実際は違う場合がほとんどです。 そのため自社の材料については測定する必要がありますが、 その際は北崎・畑の式  γ = γd + γp + γh を使い 表面張力を 3成分(d,p,h)に分けて解析します。

7.汚れを製品から剥離するエネルギーについて教えてください

付着していた汚れを洗浄液で剥離した場合、 付着時の ”汚れ/基材界面”  が 剥離後の ”汚れ/洗浄液界面 + 基材/洗浄液界面”  になり界面エネルギーも増えることになります。 この増加エネルギー(⊿G)を 剥離に必要なエネルギーとして計算します。 ⊿Gが大きい程剥離しにくく、逆に小さいと剥離しやすくなります。剥離から再付着防止までの汚れの挙動を検討したい場合は 拡張型DLVO(XDLVO)理論によるシミュレーションを行います。 付着剥離を検討する際には、 界面エネルギーに 北崎・畑の式ではなく、 酸-塩基の式  γ = γLW + γAB を使います。

8.洗浄で「落ちる/落ちない」は何で決まりますか

洗浄可否は、 汚れと基材間の付着エネルギーと、 洗浄によって与えられる化学的・物理的エネルギーの相対関係で決まります。
洗浄を強くするだけでは解決しない場合、付着状態を作っている前工程条件の見直しが有効な場合もあります。

9.汚れの再付着防止をするにはどうすればよいですか

剥離した汚れが再付着すると剥離しなかったことになってしまうので 再付着防止は重要です。 洗浄液中の汚れと製品の電位(ゼータ電位)を制御して反発させるようにすることで再付着しにくくします。 双方をマイナス電位にし反発させるには洗浄液をアルカリにする、 陰イオン界面活性剤を添加したりします。 再付着の挙動を見たい場合は DLVO理論によるシミュレーションを行います。
続いて、剥離した汚れを速やかに槽外に排出します。洗浄液槽内でも「循環+フィルタリング」を行い、 汚れの再付着の機会を減らします。 次工程のリンスでも 渦形成を避けた「槽構造、リンス水の流し方」により汚れの排出効率を上げ、 再付着を防止します。

10.複数の汚れがある場合はどのように洗浄しますか

基本は汚れの表層から除去していきます。 例えば粒子と油が付着した基板があり 汚れの最表面が油であれば、 まず油を除去してから粒子の除去をします。

11.製品と強固に付着しており超音波で剥離できない汚れはどうすればよいですか

汚れを溶解、分解して除去する、 もしくは基材を若干エッチングして汚れを浮かして除去することが考えられます。 強固に付着している無機粒子を剥離する場合は、 付着力を弱める洗浄液の検討が必要になります。 また付着状態を作っている前工程条件の見直しが有効な場合もあります。

12.洗浄不良はなぜ起こるのですか。代表的な原因と分類は?

洗浄不良は、 単純に「洗浄力不足」ではなく、 「汚れ・基材・洗浄条件の相互関係」が変化した(乱れた)結果として発生します。
工程変更や材料ロット差、 生産量の増加など、 洗浄工程外の変化が引き金になることも多く、 工程全体での整理が必要です。

13.突発的な洗浄不良と慢性的な洗浄不良の違いは何でしょうか

突発不良は異常検知と切り分けが有効です。 例えば不良発生時に「装置異常」が発生していた、 不良発生時期に「純水純度」が低下していた、 など比較的容易に見つけることができます。
しかし慢性不良は、 洗浄の設計思想そのものの見直しが必要になることがあります。 対応を誤ると、 洗浄条件の場当たり的強化につながります。

14.洗浄評価はどのように行うべきでしょうか

洗浄評価は、 外観や分析結果だけでなく、 後工程で問題が再現しないかという観点で行う必要があります。
評価方法と要求品質が一致していないと、 過剰設計や見逃しにつながります。

洗浄液に関する Q&A

1.洗浄液はどのように選定すべきか、考え方を教えてください

洗浄液選定では、 汚れの性質と除去機構を整理し、 必要以上の反応性を持たせないことが重要です。 強すぎる洗浄液は、 基材ダメージや コスト増につながります。
また短期評価で問題がなくても、 長期的には表面改質や微小ダメージが影響する場合があります。 特に樹脂製品の場合は、ソルベントクラック等の注意が必要です

2.洗浄液の洗浄力は何によって決まりますか

洗浄力は、洗浄液の化学反応性だけでなく、 拡散・界面張力・物理作用 との相乗効果で決まります。
洗浄液の単体評価と実工程での結果が一致しない理由はここにあります。

3.粒子汚れを除去しやすい洗浄液はどのような液ですか 

基本は水系の洗浄液で、 ゼータ電位をマイナスにするアルカリや、 液浸透性を向上させる界面活性剤を添加したものです。 超音波等の機械力でアシストして洗浄するのが一般的ですが、 強固に付着している場合は 汚れや基材をエッチングする等の手法が必要になる場合もあります。

4.洗浄にはなぜアルカリ洗浄液が多いのですか

アルカリは 多くの基材と汚れをマイナスに帯電させ再付着防止をしやすいことと、 同時に油を分解する作用もあるため多く用いられます。 油汚れは無いと思っていても一般環境下では常に揮発性の有機物質(油)が表面に付着してきます。 例えば洗浄後のガラスは本来濡れやすいですが、 その後放置されたガラスは水をはじくようになります。 これは環境の有機物質付着によるものです。 さらに機械工業分野で多く使われる鉄製品がアルカリで腐食しにくいこともあってアルカリが多く使用されます。

5.水系、準水系、非水系の洗浄液があるようですが、どのように分類されているのですか

”水系:水が50%を超える主成分である洗浄剤、 準水系:水を20~50%程度含む洗浄剤、 非水系:有機溶媒が主成分で水が20%未満である洗浄剤” と日本では分類されていますが、 必ずしもそうなっていないようです。 メーカーによって独自の基準もあり混乱しやすい状況です。 洗浄液選定前に成分を確認するようにしましょう。
またこれらは、 それぞれ異なる除去機構を持ちます。 「何が落ちているのか」ではなく、「なぜ落ちているのか」を理解して使い分ける必要があります。

6.汚れが、粒子、油、セラミック膜である場合、それぞれ何系の洗浄剤が適していますか

一般に、 ① 粒子:水系で 特にアルカリ+界面活性剤の洗浄剤、② 油:非水系で特に炭化水素洗浄剤、③ セラミック膜:水系で 特にアルカリ+酸化剤(または還元剤) が適していると思われます。 汚れや基材の状況によりこれらは変わる場合があります。

7.汚れを溶解して除去したい場合、どのように溶解する溶媒を見つければ良いですか

汚れのHSP(ハンセン溶解度パラメーター)の値に近い溶媒がよく溶解できます。 以前はSP値(溶解度パラメーター)を使って溶媒を探していましたが、 現在はHSPを使います。 HSPはデータベースが充実しておりますので、 自社の汚れのHSPを実験で求めれば 容易に溶解溶媒を抽出できます。

8.汚れを溶解して除去する場合、 市販の非水系や準水系の洗浄液をどのように選択すればよいですか

洗浄液メーカーから多くの洗浄液が販売されており選定に迷うと思いますが、 HSP(ハンセン溶解度パラメーター)で評価すれば 容易にどの洗浄液が適しているか判定できます。 汚れのHSPに近い洗浄液を選択します。

9.アルカリ洗浄の品質を向上させたい場合、アルカリ濃度をUpさせればよいですか

一般に油汚れであれば効果があると思われますが、 粒子汚れの場合 再付着に注意が必要です。 アルカリ濃度をUpさせるとpHが増加し ゼータ電位もマイナスで良い方向と思いますが、 一方で電解質濃度が上昇して これは再付着防止の反発の静電気力を弱める方向に働きます。 このトレードオフについては DLVOのシミュレーションで挙動解析できます。

10.ステンレス製品上のセラミック膜の剥離液について教えてください

フッ素系の薬液を使用すると容易なことが多いですが、 最近は環境面より敬遠されてきております。 アルカリに、 酸化剤(または還元剤)や界面活性剤、 キレート等を添加した剥離液が多くなっております。

11.油汚れを水系、もしくは準水系洗浄剤で洗浄したいのですが、どのような液になりますか

対象が鉱油以外の油であればアルカリでの分解洗浄、 もしくは準水系での溶解洗浄が可能です。 鉱油の場合は界面活性剤添加の準水系洗浄剤、 高濃度界面活性剤添加の水系洗浄剤で剥離(ローリングアップ)洗浄が考えられます。

12.洗浄液の劣化はなぜ起こるのでしょうか

洗浄液は使用とともに、 反応成分の消耗や 汚れの蓄積が進みます。特に洗浄できているように見える劣化状態で最も問題になりやすいです。

13.洗浄液の交換タイミングはどう判断すべきですか

洗浄の時間・回数管理だけでなく、 洗浄結果や負荷量を指標にすることで、 過剰交換を防げます。
洗浄液を常時、もしくは定期的にモニタリングすることで交換タイミングを予測できます。 例えば消耗の指標として、屈折率、密度、アルカリ度や表面張力等があります。
また洗浄液の汚れの蓄積であれば、濁度、密度、屈折率、光吸収、等があります。

14.リンス水を減らせる洗浄液について教えてください

まず現在使用している洗浄液の濃度を下げ リンスへの薬液の持ち込みを減らします。 この時洗浄品質を損なわない範囲で調整する必要があります。 また洗浄液を根本から見直し薬液を減らす、 リンス性の良い界面活性剤に変更する等があります。 また薬液をほとんど使用しない機能水(オゾン水等)や蒸気、熱水での洗浄で除去できれば リンス水は大幅に削減できます。 薬剤を減らし リンス水を減らすことで 洗浄コストを削減できます。

15.持続可能な洗浄剤の考え方を教えてください

①外部環境負荷削減(排水中の有害物質、排出VOC等) ②資源効率Up(薬液量、使用水量、エネルギー等) ③廃棄物量の削減(廃液、スラッジ等) ④安全性/規制遵守 ⑤コスト削減(洗浄流動費用、後処理費用、設備投資等) ⑥品質/歩留まりUp ⑦回収と循環(薬品、水、熱)が考えられます。
環境対応は重要ですが、安定運用できなければ結果として環境負荷を増やします。

16.洗浄コストが高くなる主な原因とは何でしょうか

洗浄液の価格もありますが、 設計上の余裕不足や過剰品質がコスト増の原因であることが多くあります。 余裕の無い洗浄工程では、 洗浄液の消耗や汚れ蓄積の速度が速く、 頻繁に洗浄液の交換が必要になります。 また洗浄歩留まりが下がりやすいため不良品の再洗浄が増えます。
過剰品質では、 洗浄液や純水の量や設備投資が増えますし、 洗浄歩留まりが下がる場合は再洗浄が増えます。

17.安価な洗浄液に変更したいのですが、注意点はなんでしょうか

洗浄力の低下だけでなく、 再付着、 乾燥性、 後工程影響を含めた総合評価が必要です。

18.洗浄液変更によるトラブル事例とその考え方を教えてください

洗浄液を変更したところ、 製品に洗浄液が残りやすくなり 後工程の成膜で膜剥げが多発したことがあります。
洗浄液変更は、工程バランスを崩す行為でもあります。 変更時は「洗浄以外の工程影響」を必ず想定します。

超音波洗浄に関する Q&A

1.超音波の洗浄メカニズムについて教えてください

①キャビテーション ②マイクロストリーミング ③加速度振動 ④直進流 ⑤化学反応 により洗浄します。主として、 低周波(20-40kHz)では大きな気泡の圧壊によるキャビテーション、 中周波(100-600kHz)では小さな気泡の圧壊によるキャビテーション、 気泡振動によるマイクロストリーミング、 高周波(800kHz-MHz)では微細気泡の振動によるマイクロストリーミングと加速度振動により洗浄します。 具体的には、 汚れにせん断や 回転力を与え 除去します。 溶解や分解などの化学反応を伴う洗浄では、 局所的に高圧・高温になるキャビテーションにより反応が促進されます。

2.低周波(20-40kHz)、中/高周波(100kHz-MHz)の洗浄の特徴、注意点にはどのようなものがありますか

特徴として、低周波は付着力の大きな汚れを除去する、 凹凸の多い複雑形状製品を洗浄する、 たくさんの製品を段積みして洗浄する、 のに適しています。 中/高周波では微細な汚れを除去する、 超音波ダメージを抑える、 均一に洗浄する、 のに適しています。
注意点としては、低周波洗浄では槽内に形成される定在波の波長が大きく、 洗浄ムラが発生します。 それをキャンセルするために 製品を揺動する必要があります。 薄い製品を洗浄する際には製品の共振で超音波ダメージを生じることがあります。 また洗浄液の水深も適正値に調整する必要があります。 中/高周波では超音波の指向性が高くなるため振動子に対して裏側の製品面は洗浄しにくくなります。

3.汚れ粒子の大きさと選択される超音波周波数の関係について教えてください

一般に汚れ粒子が大きくなると低周波、 小さくなれば中/高周波が選択されます。
低周波では大きな気泡圧壊によるキャビテーション、中周波では小さな気泡の圧壊によるキャビテーション、 気泡振動によるマイクロストリーミング、 高周波では微細気泡の振動によるマイクロストリーミングと加速度振動により洗浄します。 粒子を除去するには、 粒子に剪断力や 回転力を与える流体力が必要となるため、 大きな粒子には大きな気泡(低周波)、小さな粒子には小さな気泡(中/高周波)が適しているのです。

4.なぜ微細な粒子は洗浄しにくいのでしょうか

粒子の付着力(剥離力)は粒径に比例しますが、 粒子を除去しようとする流れ力(流体抵抗)は粒径の2乗に比例します。 そのため粒径が1/10になれば付着力は1/10ですが、 除去力は1/100になり洗浄しにくくなります。 また粒子が付着している製品表面には流速がほとんどゼロの領域(境界層 or 停滞層)があり、 粒子が小さいとその中に入り込み なかなか排出されないという状況になりやすいです。 停滞層を破壊するのに超音波が有効で、 適切な超音波の選定が必要です。

5.超音波洗浄で汚れが落ちない原因にはどのようなことが考えられますか

超音波の周波数・出力・振動子配置、 洗浄液の液深、温度、溶存ガス濃度等 の組み合わせが適合していない可能性が高いです。 また洗浄治具にピッチの細かい網かごを使うと 網により超音波が減衰し洗えなくなります。

6.IPAの超音波洗浄力(キャビテーション力)は 水と同じと考えてよいですか

いいえ、水のキャビテーションの方が強くなります。 キャビテーション洗浄の際は 泡が圧壊する必要がありますが、 IPAは水より蒸気圧が高いため泡内の圧力が高くなり圧壊しにくいです。

7.超音波キャビテーション洗浄の適温はどれくらいでしょうか

水の場合50-60℃でキャビテーションが強くなります。 アルコールの場合10℃程度です。 しかしアルコールを低温で超音波洗浄しても キャビテーションは水より弱くなります。

8.超音波洗浄に適した溶存ガス濃度はどれくらいですか

周波数によって異なります。 低周波はキャビテーション洗浄メインなので比較的多めで、 中周波はそれより少なくなります。 高周波ではキャビテーションがほとんど生じず加速度振動やマイクロストリーミング洗浄となるので更に少なくなります。

9.超音波の強さはどのように評価しますか

一般に音圧計を使用します。 圧電素子に接続された測定子(棒)を超音波槽内に入れ振動を検出します。 値は圧電素子の起電圧であるのでそれ自体に物理的意味はありません。 強弱の比較に使います。

10.超音波洗浄で汚れを除去できている場合、汚れの剥離エネルギー⊿Gより超音波の印加エネルギーが大きいと計算(確認)されているのですか

超音波洗浄はキャビテーションやマイクロストリーミング等の作用で洗浄しており単純に超音波の電力で評価できません。 ですが一般に文献等で示されているキャビテーションやマイクロストリーミングの発生流速で計算すると ⊿Gより2桁ほど洗浄力が小さくなります。 この原因として、 実際の汚れや基板表面には凹凸、変形があって実接触面積が小さい、 除去メカニズムが汚れの剪断剥離ではなく回転剥離(剪断より必要エネルギーが小さい)になっている、 汚れが破壊(分割)剥離されている、等が考えられています。 しかしそれで理論的な取り組みが否定されるものではありません。 洗浄の見えない部分を考察し、 方向性を示せることに大きな意味があります。

11.超音波洗浄の出力は高ければ良いのですか

出力過多はダメージや再付着、 液劣化を招くことがあります。

12.超音波洗浄による部品ダメージの原因と対策は何ですか

キャビテーション衝撃や製品共振が原因であるため、条件最適化が不可欠です。 キャビテーションを弱めるには、①超音波出力を下げる、 ②溶存ガスの増減、 ③周波数の増加、等があります。 共振を抑えるには、 ①周波数を変える、 ②周波数をスイープさせる、 ③製品の治具(カセット)支持点を変更する、等があります。